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シードラウンドの資金調達(約1.3億円)を実施致しました

シードラウンド資金調達(総額1.3億円)完了のお知らせ

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新規量子材料「トポロジカル物質」の応用開発と社会実装を加速
量子科学に基づく新規材料の社会実装を目指す東大発のQX(量子トランスフォーメーション)スタートアップであるTopoLogic株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:佐藤太紀、以下「当社」)は、シードラウンドとして、株式会社アイティファーム(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:黒崎守峰、以下「IT-Farm」)及び東京大学協創プラットフォーム開発株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長:大泉克彦、以下「東大IPC」)を引受先とした第三者割当増資により、総額1.3億円の資金調達を致しました。
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【TopoLogic:トポロジカル物質の社会実装を目指す東大発スタートアップ】
当社は、東京大学大学院理学系研究科、中辻・酒井研究室にて研究が進められている「トポロジカル物質」の社会実装を実現し、QXの推進を目指す東大発研究開発型スタートアップです。
近年、持続可能な開発目標(SDGs)をはじめ、地球環境や経済、社会の持続に関する取り組みが進められております。その一方で、先進国および発展途上国における生活水準向上や社会のスマート化、高度通信情報化に伴い、エネルギー需要は世界的に増加しつつ、さらに昨今の社会情勢悪化によりエネルギー供給の不安定性がもたらす影響は見過ごせない現状となっております。
我々は、量子科学による社会の変革「QX(量子トランスフォーメーション)」の一環として、従来の材料では成し得なかったエネルギーの可視化、省エネルギー化、利用技術を社会実装することでQXを推進し、エネルギーの有効利用の限界を超え、豊かな社会の永続的な実現を目指してまいります。
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【「トポロジカル物質」と社会実装に向けて】
トポロジカル物質」は、量子科学の分野において近年最も注目されている物質のひとつです。2000年頃よりトポロジカル物質に関する研究が行われ、その特異な性質の原理解明により2016年にノーベル物理学賞が贈られました。トポロジカル物質は、物性物理学の研究の系譜において、トランジスタ効果の発見、超電導理論、トンネル効果の発見、量子ホール効果の発見、巨大磁気抵抗の発見に続くノーベル賞級の一大トピックであり、
従来の物質では見られない特異な電子構造等に起因する特異な性質を示す物質です。例えば、トポロジカル物質のバンド構造は特異なディラックコーンを示し、その交点間において巨大な仮想磁場を発生させ、これが特異な物性を実現しています(※1)。
当社が扱うトポロジカル物質である「トポロジカル強磁性体」「トポロジカル反強磁性体」は、中辻・酒井研究室が世界に先駆けて材料の合成および物性の解明をリードしている物質であり、NatureやScienceなどの世界的に著名な科学論文誌において、数多く研究成果を発表しております。当社は、これらの世界最先端のトポロジカル物質を研究領域からスピンオフさせ、従来物質では実現できなかった新規素子やデバイスの開発を進め、社会実装を加速していきます。
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【当社が目指すソリューション】
当社は、トポロジカル物質の社会実装として、
(1)異常ネルンスト効果を活用した熱電変換デバイス(熱流センサ、化学センサ、熱電発電、熱輸送等)の開発、および開発したデバイスを用いたサービスの提供
(2)巨大異常ホール効果を活用したトポロジカル物質のメモリ素子への応用とMRAM
としての活用を目指します。

(1)熱電変換デバイス

熱は、人間、機械、自然において不偏的に発生しうるエネルギー消費の一形態です。しかしながら、その熱を直接観察したり、排熱が活用することが難しいケースが多いなど、必ずしも熱を有効的に活用できている現状ではありません。このような熱の振る舞いに関して多くの課題が潜在化しており、すなわち、熱のセンシングおよびソリューションによるエネルギー活用のポテンシャルは極めて高いと考えております。特に近年は、データセンターなどの産業機器の排熱の増加によるエネルギー資源利用の加速と地球温暖化への影響が課題となり、熱対策は一層重要性を増しています。当社は、トポロジカル物質を用いた熱電変換デバイスの開発を進め、熱をデータ化し、熱をコントロールすることが可能な未来を目指してまいります。
なお、従来は、例えばゼーベック効果(熱流と同一の方向に電圧を生じさせる効果)に基づく熱電変換デバイスが存在していましたが、製造プロセス等の課題により廉価ではなく、広範な社会実装の実現が困難でした。一方で、当社が開発する熱電変換デバイスは、異常ネルンスト効果(磁界と熱流とに垂直な方向に電圧を生じさせる効果)に基づくものであり、薄膜化、大面積化、低コスト化が可能であると考えています。
熱電変換デバイスとして、例えば、熱流を検知する「熱流センサ」、化学反応の吸熱/発熱を捉える「化学センサ」、熱から発電する「発電デバイス」、熱の流れをコントロールする「熱輸送デバイス」が挙げられます。これらの熱電変換デバイスは、自動車、機械、航空機、電子機器、家電、鉄鋼や化学等の装置産業、住宅、建設、社会インフラ、ウェルネス、ウェルビーイングなど、社会のあらゆる活動に付随して生じる「熱」を「データ」や「エネルギーソース」に変換することが可能です。熱のエネルギーの変換技術は、例えば機械や電子機器の異常検出、内燃機関の定量的な評価、ナノスケールで発生する熱のコントロール、人間活動のセンシング、人肌レベルの低熱含量排熱の活用など、従来は捨てられ、見過ごされていた熱というエネルギーを、社会活動の重要なリソースとして活用することが可能になると考えております。

(2)メモリ素子

スマートIoTやブロックチェーン、量子コンピューティングなど、高度情報通信社会の到来により、世界的なエネルギー消費量が増加の傾向にあります。例えば、世界のデータセンターの電力消費量は10年後には現在の約10倍となり、世界の消費電力の15%を占めると言われています(※2)。そのため、データセンターを構成する各種コンポーネントにおいて、消費電力低減が喫緊の課題となっています。
MRAM(磁気抵抗メモリ)は、MTJ(磁気トンネル接合)を構成要素とする不揮発性メモリであり、MTJの磁化(スピン)の向きにより情報を記憶します。従来のメモリと異なり電荷を用いないため、メモリの省電力化が期待されております。しかしながら、スピン反転に必要な外部磁場の導入により記憶密度の向上が困難であり、またスピン反転に必要な電流を抑えることが実用化の大きな課題とされています。
当社は、MRAMのTHzレベルでの高速動作、高集積化および省電力化をトポロジカル物質の応用により達成できる可能性に着目し、ポストシリコンテクノロジーの展開として、トポロジカル物質による新規メモリ素子の開発に挑んでまいります。
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【今後の展開】
当社はこのたび調達した資金をもとに、熱流センサのプロダクトおよびサービスのプロトタイプの開発、並びにトポロジカル反強磁性体によるメモリ素子の基礎開発を進めます。具体的には、当社は上記2つの技術課題を解決するための組織体制の構築とPoCの達成を目指し、今後の製品及びサービス立ち上げに繋げてまいります。また、当社は新たな量子科学に基づく材料のプラットフォーマーとして、上述したトポロジカル物質の用途探索に加え、社会実装のための新規量子材料の開発を推進してまいります。

【中辻 知 教授からのコメント】

トポロジーは形を変えても変わらない性質を取り扱う数学の概念です。その概念は素粒子、宇宙、量子情報の分野において次々と新しい現象の発見に重要な寄与をしただけでなく、また、物性の世界においてはトポロジカル絶縁体やワイル磁性体などの新しい物質群の発見につながっています。その機能性は今後ますます発展していくことが期待されており、TopoLogic社はこの学理に基づいて、これまでの不可能であった応用を可能にして社会に届ける役割を担ってくれることを期待しております。

【引受先様からのコメント】

〈IT-Farm ジェネラルパートナー 白井 健宏 様のコメント〉
アイティーファームはこれまで20年の投資においてZOOMなど世界トップクラスの案件に関わってきましたが、この度新設の国内ディープテック投資ファンドの1号案件として、まさに世界のトップに立ち得る技術とそれを目指すビジョンと野望を兼ね備えたTopologicと出会い出資に至ったことを大変喜ばしく思っています。Topologicには弊社のワールドワイド・ネットワークを活用して大きく羽ばたいてほしいと願っております。
〈東大IPC 代表取締役社長 大泉 克彦 様のコメント〉
社会実装に長い時間と投資が必要とされる素材分野において、トポロジカル物質でチャレンジするTopologic社に支援する機会をいただきました。本分野の基礎研究で世界をリードする中辻・酒井研究室の研究成果の社会実装のためには、スタートアップであるTopologic社とともに、国内外の多くの事業会社との連携が不可欠であり、東京大学周辺のイノベーション・エコシステムのネットワークが最大限活かされると大きな期待をしております。

【引受先概要】

〈IT-Farm会社概要〉
会社名:株式会社アイティファーム
代表者:代表取締役社長 黒崎守峰
設立:1999年11月
本社所在地:〒163-1305 東京都新宿区西新宿6-5-1 新宿アイランドタワー5F
事業内容:技術系国内外スタートアップに対するアーリーステージ・ベンチャー投資
〈東大IPC会社概要〉
会社名:東京大学協創プラットフォーム開発株式会社
代表者:代表取締役社長 大泉克彦
設立:2016年1月
本社所在地:〒113-8485 東京都文京区本郷7-3-1 東京大学南研究棟アントレプレナーラボ261
事業内容:東京大学周辺のイノベーション・エコシステムの発展を目指す投資事業、起業支援プログラムの運営

【人材募集について】

日本だけでなく世界でも類を見ない量子科学材料にフォーカスしたスタートアップである当社では、熱電変換デバイスおよびメモリ素子開発を担うリードエンジニア人材を募集しております。
特に、材料・電子工学・薄膜プロセス・半導体設計など、素材に関する要素技術や応用技術について経験や知見をお持ちの方は大歓迎です。新たな物質による新たなデバイスの開発をゼロから挑戦してみませんか?
興味や関心がございましたら、info@topologic.jpまでご連絡をお願いいたします。

Appndix

(※1)トポロジカル強磁性体、トポロジカル反強磁性体の主な特異な効果。
  1. 異常ネルンスト効果 熱流の方向および磁性体の磁化方向に直交する方向に電圧を発生させる効果。
  1. 異常ホール効果 磁場と電圧の方向に直交する方向にホール電圧を発生させる効果。従来は強磁性体でしか見られない現象であったが、特に中辻グループが発見したトポロジカル反強磁性体は、仮想磁場によりゼロ磁場であっても室温以上で巨大な異常ホール効果を発現する。
(参考:東京大学物性研究所プレスリリース:https://www.issp.u-tokyo.ac.jp/maincontents/news2.html?pid=10521
 
図:異常ネルンスト効果(左)とゼーベック効果(右)を示す模式図
(引用:Sakai, A., Minami, S., Koretsune, T. et al. Iron-based binary ferromagnets for transverse thermoelectric conversion. Nature 581, 53–57 (2020). https://doi.org/10.1038/s41586-020-2230-z
 
(※2)引用元
  • 国立研究開発法人科学技術振興機構低炭素社会戦略センター「情報化社会の進展がエネルギー消費に与える影響(Vol.2)-データセンター消費エネルギーの現状と将来予測および技術的課題-」(https://www.jst.go.jp/lcs/pdf/fy2020-pp-03.pdf
 
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